認知症や脳機能障害など、自分の意思で契約などの法律行為や財産管理ができなくなったときのための備えです。 家族が代わりにできることも多いですが、本人にしか認められないことも意外とたくさんあるんです。
任意後見契約とは?
任意後見契約は、認知症になったあとの財産管理と身上監護をお願いできる人(後見人)を、元気なうちに自分で見つけてあらかじめ結んでおく契約です。
任意後見人を引き受けてもらう人は、家族の誰かでもいいですし、信頼できる第三者でもいいです。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度のふたつがありますが、法定後見人は認知症になったあとに家庭裁判所で選任され、任意後見人は元気なうちに自分で選びます。
認知症になったらできない法律行為
1.不動産の売却ができない
認知症や高次脳機能障害により判断能力がなくなってしまったら、売買契約が有効に結べないため、不動産を売却することができません。
ゆくゆくは自宅を売却して夫婦で老人ホームに入ることを計画していても、実行できなくなってしまいます。
2.預貯金の引き出しができない
認知症の本人に代わって家族が手続きをしようにも、口座の暗証番号がわからなければ、たとえ窓口で事情を話しても預貯金を下すことができません。
本人は生きているのに本人の口座からお金が引き出せなくなると、病院代などの支払いが大変です。
3.遺産分割協議ができない
認知症等で判断能力がない方は、遺産分割協議はできません。
高齢の配偶者を亡くされた場合や長年放置していた相続手続きの場合は、相続人が高齢で認知症になっていることもあり、成年後見人をつけないと相続手続ができないことがあります。
任意後見契約を結ぶ6つのメリット
1.確実に支援を受けられる
いつか判断能力が衰えた時、介護保険の手続きや施設に入る手続きが必要になるかもしれません。しかし認知症になったあなたは、自分でその手続きをすることはできません。財産があっても自分のために使えないのです。
任意後見契約を結んでおくことにより、任意後見人が将来のあなたに代わって、必要な時期に必要な手続きを行うことができます。
2.家族間のもめごとを避けられる
財産目当ての介護争奪戦が起こることもあれば、介護を引き受けている人がほかの親族から財産の使い込みを疑われてしまうなど、介護をめぐって家族間で争いが起きることがあります。
公正証書で任意後見契約を結んでおけば、後見人の行為はあなたの意思に基づくものだということを証明できるので、無用な家族間のもめごとを避けられます。
3.法律の枠を超えた関係を続けられる
任意後見契約は、あなたが一番信頼できる人に後見人になることをお願いすることができます。
もちろん家族も後見人になれますが、長年の友人や婚外のパートナーなど、法律的に認められる家族としての権限をもたない人も、後見人としてあなたの人生に最後まで寄り添うことができます。
4.自分らしい生活を続けられる
法定後見制度は、後見が必要になってから裁判所を通して後見人をつける制度なので、あなたと全く面識のない人が後見人に選ばれることもあります。
任意後見制度は、後見人も後見内容も自分で決めて契約をするので、あなたの思いを後見人へ十分に伝えることができます。そのため、たとえ判断能力が衰えたあとでも、元気だった頃のあなたが望んだあなたらしい生活を続けられると期待できます。
5.望まない後見開始を避けられる
任意後見制度は法定後見制度に優先されます。予期せぬ理由で法定後見を利用しなければならないことになっても、任意後見契約を結んでおけば、将来、法定後見人がつくことを避けられます。
6.相続人でない後見人にも財産を渡せる
任意後見契約は、無報酬の契約にすることも、月々10万円を報酬として支払うことも自由です。
友人やお嫁さんなど、相続人でないため財産を相続できない相手にも、任意後見契約の報酬として、あらかじめ決めておいた金額を生涯毎月支払うことができます。
契約までの流れ・必要な書類
必要な書類
- 本人
- 印鑑登録証明書
- 戸籍謄本
- 住民票
- 実印
- 受任者
- 印鑑登録証明書
- 住民票
- 実印(発行後3ヶ月以内のもの)