遺言書はお金持ちが作るもの? そのようなイメージをお持ちの方が沢山いらっしゃいますが、実は大きな間違いです。
遺言とは?
遺言はあなたの思いを伝える最後の方法です。遺言に書ける内容は、財産のこと、相続のこと、身分のことなどに限られていますが、付言事項として、どのような思いで遺言の内容を決めたのかを記すことができます。
どのような思いで誰にどんな財産を受け継がせるのかを伝えることで、受け取る相続人同士のトラブルを防ぐ効果があります。
あなたが亡くなった後も、残された家族がこれまで通りの関係を続けられるような遺言を一緒に考えましょう。
遺言を残すことでできること
1.相続人が認知症でも相続登記ができる
認知症を発症している相続人は、相続手続きができません。脳機能障害などにより意思表示ができない人も同じです。相続人にそのような人がいる場合、成年後見制度を利用して成年後見人に相続手続きを行ってもらう必要があります。
しかし、ひとたび成年後見人が選任されると、本人が亡くなるまで後見は続きますので、相続手続きが終われば後見人を解任するということはできません。そのため、認知症の相続人が亡くなるまで相続手続きを行わず、スムーズな財産の承継が行われないケースが増えています。
2.財産を漏れなく相続させられる
夫婦間ではお互いの財産の多くを把握していると思いますが、それでも配偶者のへそくりや、親から相続していた不動産や預貯金などを完全に把握できている人は少ないかもしれません。まして子供は親の財産をほとんど把握していない状況で相続が発生することもしばしばです。 財産目録が作成してあればよいのですが、それがない場合、どうやって財産を探すのか。
相続財産を一括して調べられる機関があると思っている方もいらっしゃいますが、残念ながらそのような機関はありません。不動産なら名寄せ帳を取得したり、銀行へ故人名義口座の照会をかけたり、郵便物を確認したり遺品からヒントを探したりと、財産目録がない相続は意外と大変です。
結局、家族が把握している大きな財産だけ相続手続きをして、小さな相続財産は漏れてしまうことがあります。
3.特に心配な家族に多くの財産を残せる
遺言書がない場合、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)を行って財産を分けるか、法定相続分通りに財産を分けることになります。
老齢の配偶者や障害のある子供など、相続人の中に特に心配な家族がいる方は、遺言書でその家族に残す財産の内容や割合を決めておくと安心です。
4.海外に住む相続人に負担をかけずに相続手続きができる
相続手続きに必要な住民票や印鑑証明書などは、海外に在住している相続人は取得できません。そのため、現地の大使館でサイン証明を発行してもらうなど、相続手続きに必要な書類を集めることが大変です。
遺言書を作成したときに遺言執行者を指定しておくことで、相続人の協力なく遺言内容を実行することも可能ですので、子供が海外にいる方や未成年の孫が相続人になることが分かっている方は、遺言執行者まで定めた遺言書を作成しておくべきでしょう。
5.未成年の相続人がいても、特別代理人を選任せずに相続手続きができる
未成年者は相続手続きに参加できません。そこで、相続人に未成年者がいる場合は、特別代理人を家庭裁判所で選任してもらい、特別代理人と一緒に相続手続きをすることになります。未成年者の親も相続人となる場合は、相続手続きにおいて利益相反となりますので、その親は特別代理人になれません。
また、未成年の子供が複数いる場合は、複数の特別代理人が必要です。この場合も、遺言書を作成したときに遺言執行者を指定しておくことで、相続人の協力なく遺言内容を実行することが可能ですので、複雑な手続きをすることなく相続手続きを終えることができます。
遺言に対する勘違い
残された家族で話し合って決めればいい
あなたが亡くなった時に配偶者やその他の相続人が認知症を発症していたら、話し合って(遺産分割協議をして)相続財産を分けることができません。
法律で決まっている相続分通りでいい
相続財産に不動産が含まれている場合、法定相続分で相続すると、不動産が共有となりなすのでその後に売却したり二次相続が発生したときに大変な手間がかかります。
預貯金が少ないから遺言書なんて必要ない
たとえ口座に少額しか残っていなくても、亡くなった方の口座を解約するには相続手続きが必要です。少額口座の相続のために大変な手続きを必要とさせないためにも、遺言書は必要です。
古い家だし誰も欲しがらないから遺言書なんて必要ない
不動産を負動産として残さないためにも、生前のうちから相続人としっかりと話し合い、その解決策を遺言書にのこしておくことが大切です。不動産の相続は、空き家問題や相続争いに発展する難しい問題となることがあります。
知り合いはみんな遺言してないから必要ない
2020年7月10日より自筆証書遺言の保管制度が開始され、国を挙げて遺言制度を普及させようとしています。それだけ、相続人同士のトラブルが多く、遺言がないために放置されている不動産などが引き起こす社会問題が増えてきているのです。
遺言書が必要な人
不動産を持っている人
相続人が複数人いる場合は、遺言書で不動産を取得させる人を決めておくことをお勧めします。
結婚していて子供がいない人
子供がいないご夫婦で配偶者が亡くなると、義理の親や義理の兄弟が相続人になることがあります。
未成年の子どもがいる人
未成年の子供がいる人が亡くなると、未成年特別代理人を選任しないと相続手続きができないことがあります。
独身の人
独身の人は、相続財産を把握することが難しいので、財産目録を作成しておきましょう。
婚外のパートナーやペットに財産を残したい人や、財産をどこかに寄付したいという方も多いですが、相続人以外に財産を残す場合は遺言が必要です。
家族の仲が悪い人
仲の悪い家族で遺産分割協議を行うことはとても難しいです。
家族が話し合わなくてもそれぞれに財産を譲り渡せるよう、遺言を残しましょう。
今後の生活が心配な家族がいる人
高齢の配偶者や障害のある子供など、今後の生活が心配な家族に多く財産を残すためには遺言に書き記す必要があります。
長期的な生活の不安を解消するには信託を活用するとよいでしょう。
相続人が海外に住んでいる人
住民票や実印登録ができない海外在住者が相続人にいると、それらに代わる書類を大使館などで発行してもらわなければならず、通常の相続手続きより大変です。
ご提案したい遺言方式
1.公正証書遺言
公正証書遺言は、相続発生後すぐに各種手続きに利用できる遺言書です。専門家と内容を十分に話し合って作成することで、法律的に不備のない遺言書を作成できます。
遺言書を作りたいけど何をどうしたらいいのか分からない方は、ぜひご相談ください。必要書類の収集から遺言書の原案作成、公証人役場との打ち合わせなどもすべて行います。
2.保管制度を利用した自筆証書遺言
これまでの自筆証書遺言制度の不備を解消するために、自筆証書遺言書の保管制度が2020年7月1日より開始されました。これにより、自筆証書遺言の形式的な不備は、保管前に解消されますし、保管制度を利用すれば、自筆証書遺言で必要とされる裁判所の検認も不要となりました。
公正証書遺言を作成するより費用が安く、これまで遺言書の作成など考えたこともない若い世代の人にも利用しやすい制度となっています。
50代以下の方は死亡率も低いことから遺言書を作成しない方がほとんどです。しかし、若い世代の方がもし亡くなった場合、相続人が未成年者ということが多くあり、未成年者が相続人の相続手続きはとても大変です。
遺言書を残す手間とは比べられないほどの負担を家族に残さないためにも、「子供ができたらとりあえず遺言」というくらいのハードルの低さで自筆証書遺言の保管制度を利用してほしいと思います。
作成までの流れ・必要な書類
公正証書遺言の場合
遺言を作る方(遺言者)から直接お話しをうかがいます。
相続財産と推定相続人を調査します。
遺言書の原案を当職が作ります。
遺言者が希望する相続等が実現できるように、繰り返し内容を検討します。
遺言書案と資料を公証人へ送り遺言公正証書案にしてもらいます。
公証人から送られた遺言公正証書案を遺言者が確認します。
公正証書を作成する日時を決め、作成費用をお知らせします。
公証役場へ行くか、公証人に出張してもらい、遺言公正証書を作成してもらいます。
※当職がお手伝いするのは【8】までです。
必要な書類
- 遺言者の身分証明書
(顔写真付き身分証明書または印鑑登録証明書) - 遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍等
- 相続人以外に受遺者がいる場合は住民票
(法人の場合は資格証明書) - 不動産の登記事項証明書
- 不動産の固定資産評価証明書または課税証明書
- 預貯金の通帳のコピー
- 有価証券を特定できる資料
- 証人2名の身分証明書
保管制度を利用した自筆証書遺言の場合
遺言を作る方(遺言者)から直接お話しをうかがいます。
相続財産と推定相続人を調査します。
自筆証書遺言の原案を当職が作ります。
遺言者が希望される相続等が実現できるように、また、自筆証書遺言や保管制度の様式に合うようにアドバイスします。
遺言書案をもとに手書きで遺言書を作成してください。
予約をとって遺言書保管所(法務局)へ行き手続きを完了してください。
※当職がお手伝いするのは【4】までです。
必要な書類
- 遺言書
- 保管申請書
- 住民票の写し
- 顔写真付き身分証明書